海谷山塊(新潟) 鉢山(1575.0m) 2019年5月17日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 4:55 駐車箇所−−5:17 林道を離れる−−6:04 標高880mで尾根を離れる−−6:07 昼闇谷−−6:24 標高950mで尾根に乗る−−6:52 標高1050mで西側の谷に出る−−7:58 1440m鞍部−−8:40 鉢山(休憩) 9:20−−9:45 1440m鞍部−−10:09 標高1030mで尾根を離れる−−10:19 昼闇谷−−10:24 尾根に乗る−−10:42 林道−−10:53 駐車箇所

場所新潟県糸魚川市
年月日2019年5月17日 日帰り
天候
山行種類残雪期の籔山
交通手段マイカー
駐車場林道路側に駐車余地あり
登山道の有無無し
籔の有無鉢山東尾根を除いて残雪のためほぼ藪無し。鉢山東尾根は灌木藪が主体だが根曲がりではなく意外に歩きやすい
危険個所の有無鉢山東尾根の北側は切れ落ちているので転落注意。ただし潅木藪があるので雪さえ無ければ簡単には落ちないと思う
冬装備無ピッケル(使用せず)、12本爪アイゼンは昼闇谷左岸尾根の上り下りで使用したが過剰装備。アイゼン、ピッケルとも鉢山東尾根での使用を想定したものだがそこに雪は無かった
山頂の展望北側が開ける
GPSトラックログ
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コメントアケビ平から昼闇谷を越えて1440m鞍部から東尾根を往復。1440m鞍部までほとんど残雪が残り藪漕ぎはごく僅かで済んだ。問題の東尾根は思ったよりも危険箇所が無く岩登りの要素はほぼゼロで、尾根上には明らかに刈り払った形跡あり。藪は主に潅木藪だが利根水源山脈のような細い低潅木がメインで藪漕ぎとしては楽な部類で意外とあっさりと山頂に登ることができた。ただしこれは東尾根に雪が無い時の話で積雪期に雪壁になりそうな箇所が3箇所程度あった。一般的にはこの尾根の雪が落ちたタイミングで登るのがベスト。ただし遅すぎると昼闇谷のスノーブリッジが消えて横断が厳しくなる。山頂の三角点は潅木の中だが北側が開ける。本当の最高点は三角点のすぐ東側で50cm程度高い
参考にした記録静かな山へ(2017年5月27日)


1440m鞍部から見た鉢山東尾根(山頂は見えていない)


橋の手前に駐車(標高560m付近) 頑丈な橋
橋のすぐ先に開いたままのゲート ゲートのすぐ先で残雪登場
残雪に埋もれた林道を進む 場所によっては雪解けしている
林道が右に逃げる(標高670m付近) 林道を離れて上へ
標高710m付近から見下ろした西尾野川 790m微小ピーク。植林はここまで
790m微小ピークの先も残雪が続く 標高870m付近から見下ろした昼闇谷
標高880m付近で昼闇谷へ下ることに 藪は思ったより薄い
昼闇谷(標高900m付近) 標高950m付近の左岸を登ることに
小さな滝がある場所だけ穴あり アイゼン装着
昼闇谷の荷造り紐目印 雪渓を登り終えて尾根の一角へ(標高950m付近)
標高1010m付近の平原
標高1010m付近の平原から見た鉢山。山頂部のみ僅かに見えている
標高1030m付近で右にトラバース 標高1050m付近。まだトラバース中
標高1050m付近で沢に到着。ここを登る 標高1070m付近のスキー跡?
標高1210m付近 標高1230m付近のおにぎりの包装
標高1260m付近のペットボトル 標高1340m付近
標高1430m付近から見た昼闇山〜鉢山
1440m鞍部から見た昼闇山〜鉢山
1440m鞍部から見た後立山
1440m鞍部の切口が平らな木 1460m峰から見た鉢山。いよいよ核心部に突入
カタクリが和ませてくれる タムシバは開花し始め
標高1450m付近。灌木藪の尾根を進む 標高1450m付近
標高1450m付近から北側斜面を見下ろす 標高1450mから傾斜が出始めた箇所
標高1460m付近から見下ろす 標高1460m付近
標高1470m付近 標高1480m付近。微小肩の急登。冬は雪壁だろう
微小肩を越えた標高1490m付近 標高1500m付近。大したことが無い岩場が見える
東尾根上には多数の刃物跡あり 標高1510m付近の岩場。無雪期なら簡単に越えられるが
冬場は雪壁だろう
岩場を越えたら次の岩場。藪が薄い左斜面を登った 左斜面をトラバース中(標高1520m付近)
標高1520m付近で傾斜が緩み残雪登場 標高1540m付近で肩に出る。あっさりと核心部終了
標高1560m付近で藪の微小ピークを越える 標高1560m付近から見た鉢山山頂部
鉢山山頂。山頂付近は雪無し 鉢山山頂標識
三角点東側の真の最高点 鉢山から見た昼闇山方面
鉢山から見た阿彌陀山 鉢山から見た烏帽子岳
鉢山から見た西〜北の展望(クリックで拡大)
鉢山から見た阿彌陀山、烏帽子岳の稜線
山頂東側の雪田から見た阿彌陀山〜昼闇山(クリックで拡大)
山頂東側の雪田から東を見ている 標高1560m付近の微小ピーク北側は岩だった
帰りは標高1560m付近の微小ピーク北側を迂回 残雪で藪を迂回し終わって尾根に復帰
標高1540m付近の肩 標高1540m付近の肩から下りへ
標高1530m付近をトラバース中 標高1520m付近をトラバース中
トラバースを終えて2番目の岩場直下に出る
ここも冬は雪壁だろう
標高1550m付近から見た昼闇山方面
標高1540m付近 標高1500m付近。もう傾斜は緩い
1460m峰で残雪にありつく。もう藪は無い
1460m峰から見た鉢山〜昼闇山
1440m鞍部 1440m鞍部近くの真新しいカモシカ足跡
1440m鞍部付近から見た鉢山 標高1350m付近
標高1190m付近で小尾根を越える 標高1190m付近からさらにトラバース
標高1180m付近 標高1180m付近。無雪期は盛大な藪
標高1170m付近で尾根上に出る 標高1100m付近
標高1020m付近から昼闇谷を見下ろす 標高980m付近。往路に登った雪渓入口
標高960m付近。ここから傾斜が出る 標高950m付近
標高890m付近で昼闇谷に出た 下流100m程で大きく雪が割れている
標高890m付近から右岸へトラバース 藪は薄く短い
目印があったので残雪期もトラバース箇所らしい 標高890m付近で右岸台地に乗る

トラバース地点目印の大きな枯れ木 標高790m付近の植林最上部の大岩
標高750m付近 標高660m付近で林道に合流
林道脇はフキノトウでいっぱい 沢は雪解けで増水していた
駐車箇所到着 営業休止中の焼山温泉だが車が何台もあった
焼山温泉付近から見た烏帽子岳、阿彌陀山


 海谷山塊で登山道が無い山のうち残りは鉢山のみとなった。鉢山は東西に細長い稜線が延び、南北側は絶壁の連続で、ゲジゲジマークに囲まれて尾根は細く、どの程度の危険があるのか地形図だけでは想定しにくい。ネットで検索すると積雪期の記録がいくつかあるが、見るからに片側が切れ落ちた痩せ尾根で雪の付き方が恐ろしく、いざと言うときのためのザイルが無いとヤバ過ぎて登れそうにない。実際、パーティーで登った記録ではロープを出していたし、途中で撤退した記録もいくつもあった。写真で鉢山山頂まで北側から広い斜面で雪が繋がっているので登れるのではないかと考えたが、地形図を見る限りでは崖マークで無謀で、グーグルの衛星写真を見てもほぼ絶壁に近く無理っぽかった。当然ながら無雪期は藪でアプローチが厳しすぎて記録は皆無。

 地形図を見る限り、登路としては東尾根しか無さそうだ。その場合、アプローチはアケビ平しか実質的に無い。いろいろ考えた結果、最高にやばそうな山頂直下東尾根の雪が落ち、なおかつそこまでのルートに雪が残った時期がベストと考えた。おそらく東尾根の痩せて急な地形ならかなり早く尾根上の雪は落ちてしまうだろうから、このエリアの残雪状況を考慮すると4月下旬〜5月上旬が該当しそうだ。

 そんな中、ネット検索で5月下旬に登った記録を発見。アプローチは焼山温泉からではなく砂場集落から吉尾平につながる林道であったが、核心部は私の計画と同じだった。私の想定した時期に近く、危険エリアは全て雪が落ちて普通に通過できたとのこと(ただしアプローチで藪が出ていて苦労したとのこと)。特に岩の技術が必要とか書かれておらず、私の実力でもいけそうな感触を得た。ただし雪の残り方はその年によって異なるし、危険箇所の感じ方も個人差があり私でも本当に大丈夫かは不明。装備には万全を期して阿彌陀山同様にマジなピッケル、重い12本爪アイゼン、それに25mのお助けロープを持つことにした。今シーズン成功した烏帽子岳、阿彌陀山に引き続いて海谷山塊の難峰三つ目に登頂できるだろうか。ネットで調べた限りは鉢山の登頂記録は、烏帽子岳、阿彌陀山と比較して明らかに少ないが、難しい山だからというよりも、遠くからイヤでも目立つ烏帽子岳、阿彌陀山と比較すれば圧倒的に目立たないからが理由であろう。

 5月も中旬を過ぎれば麓の雪は消えて昼闇山で山スキーをする人はほとんどいないだろう。最大の難関は昼闇谷の渡渉で、残雪期は完全に雪で埋もれるので心配は無いが、5月中旬だとどの程度遡上すれば谷が雪に埋もれるのか皆目分からない。あまり上流まで遡上する必要が出てくると後のトラバースが面倒になるので、ここでダメならまた来年だ。正直なところ、5月半ばでは雪解けが進んでアプローチの藪漕ぎで疲れて諦める羽目になるだろうと想像していたが、今年はこれ以降は雪解けが進んで絶対に無理だろうと考えていたので、行ければラッキー程度の期待を持って出かけることにした。

 大型連休中の代休で金曜日を休みにして木曜夜に現地に入った。今年冬で営業休止した焼山温泉脇から雪が無い舗装道路を上がっていくのは何とも不思議な感覚で、周囲には全く雪が見えずにアプローチから藪漕ぎかなぁと不安になる。早く雪が出てこいと考えながら車を走らせると、鉄板が敷かれた橋で沢を渡った先の植林帯で残雪が現れ車は進入不能になり、橋まで戻りその手前の駐車余地で仮眠。さて、植林中は雪が残っているが、植林が終わって自然林に変わっても雪があるだろうか。アケビ平は傾斜が緩く杉の緑で日当たりが悪いので周囲より雪の残り方が多いのは当初から想定していたが、自然林に切り替わってからの残雪状況は想像が付かない。なお、私が参考にした記録では吉尾平の林道経由で入っているが、林道は東斜面であることと谷の横断が多いことを考慮すると、今の時期では部分的な残雪で大して車では入れないと判断し、当初計画通り焼山温泉経由とした。

 さすがにこの時期は朝の冷え込みも弱く、厚手の防寒着は不要。日中は暑くなるので防寒着は置いていこうかとも思ったが、風が強くて体感温度が下がる可能性もあるので持って行くことに。新潟の天気予報は安定した晴れで雷雨の心配も無し。日焼けしそうなので麦藁帽子を持っていく。さて、山頂に立つことができるか? この時点でアプローチの藪漕ぎや昼闇谷の渡渉のリスク等を勘案して、成功する確率は半々と見ていた。

 最初は林道歩き。橋を越えて植林に入ると同時に雪が現れる。この林道は昼闇山に登ったときに歩いているが、あの時は林道は完全に雪の下でその存在は木の間隔でしか分からなかったが、今は場所によっては乾いたコンクリート路面が出ていた。林道は最後は右にカーブして昼闇谷方面へ下ってしまい、カーブで道を外れて植林帯を適当に上目指して登っていく。ここも残雪たっぷりでどこを歩くのも自由自在。植林で高度を上げて自然林に入っても雪が残っていることを祈るばかりだ。山スキーの適期を過ぎているので雪の上にスキー跡は見られない。雪は良く締まってワカンは不要。時期的にそれが当然なので今回はワカンは持ってきていない。というか、もう車にはワカンもスノーシューも積んでいない。ピッケルとアイゼンを車から降ろす日もそう遠くないだろう。標高710m付近で右下方の西尾野川を覗き込んだがスノーブリッジ皆無で轟音を立てて流れ下り渡渉不可能な状態。昼闇谷の分岐点はもう少し先だが、この感じだと合流点よりかなり高度を上げないとスノーブリッジは無さそうだ。

 標高790m付近の微小ピークでとうとう植林が終わってブナ林に切り替わるが、まだ傾斜が緩いからか残雪が続いてくれ、このまま台地状の右岸で高度を上げる。標高880m付近で斜面の傾斜がきつくなる地点で昼闇谷を見下ろすと、うまい具合に流れが断続的に残雪に埋もれているのが見え、これなら渡渉できそうだと判断して藪が薄い箇所から谷へトラバース。トラバースの前半は雪が消えて根曲がり木が多かったが隙間が多く、大した藪漕ぎにならずに済んだ。後半は残雪にありついて藪から開放される。

 標高870m付近で昼闇谷に下ると、これより上流側は一面が残雪に覆われて流れは雪の下。1箇所だけ小さな滝があるようで穴が開いて水の流れの轟音が聞こえているが、その穴の断面の雪の厚さは充分。おそらくここより上流はずっと雪に埋もれているのだろう。逆に下流側は200mくらいで流れが見えており、ちょうどこの辺りが安定した残雪の境界線だったようだ。近くの木の枝には荷造り紐の目印あり。山スキーヤーのものだろう。雪面はまだ荒れていないがスキー跡は認められない。

 このまま昼闇谷を登ってしまうと1440m鞍部から遠ざかるので適当に左岸尾根に上がる必要がある。両岸ともかなりの傾斜で登れる場所があるか心配したが、適度な傾斜の一筋の雪渓が登場、そこを登ることにした。雪の締まり方、傾斜からしてアイゼン装着の方が楽だと判断し、過剰装備だが12本爪アイゼンでサクサクと登っていく。

 標高950mに達すると傾斜が一気に緩んで谷の幅も大幅に広くなり、谷というよりもう尾根の一部と化していた。傾斜が緩いので残雪量も充分で地面はどこにも見えない。この尾根はまだ目的地に直接繋がる場所ではなく、このまま登ると尾根が途中で昼闇谷へ消えてしまうため、この尾根の西側の谷を越えた先の尾根に乗り換える必要がある。しかし今の位置では西側の谷は深く標高差を損するので、もう少し高度を上げて谷が浅くなった場所から乗り移ることにした。もうアイゼンの出番は無く足の錘にしかならないので、ここでアイゼンを脱いでザックの中へ。おまけに顔に日焼け止めを塗る。麦わら帽子で直射日光は防止できるが雪による照り返しだけで結構な日焼けをしてしまうので、特にこれから南向きに登るのだから日焼け止めは必須だ。

 標高1020m付近で尾根の傾斜が緩んでほぼ平坦地に変わり、右へトラバースしやすくなったのでここで右へ。雪に埋もれた小さな谷を横断して小尾根も横断して目的の谷へ出る。水の流れや藪は完全に埋もれて一面の雪面で快適に登ることができた。谷にはほとんどデブリはなく雪面は安定し、非常に歩きやすい。この谷を滑るスキーヤーもいるようで2つのゴミを目撃した。周囲に地面が見える箇所は皆無で藪も皆無。よって無雪期の藪の程度は不明だが、この豪雪地帯なので深い根曲がり竹が順当だろう。

 このまま谷を登り続けると鞍部より東の1570m肩付近に出てしまうため再び尾根の乗り換え。この付近はどこも緩やかな斜面なのでトラバースは簡単だ。右手の緩やかな尾根に上がり、最後は1408m峰に繋がる尾根に出た。ここまで来てやっと目的地の鉢山が見えるが、岩稜の東尾根はほぼ完全に雪が落ちている。肩の部分から西側に雪が残っているが、そこはもう傾斜が緩い場所なので安全エリアのはず。問題の岩稜地帯はここから見る限りあからさまな岩壁は見えず、全体が潅木に覆われているようだ。もしそうなら小規模な岩壁程度なら藪に掴まってクリアできるだろう。いけそうな感触大であった。

 昼闇山から続く尾根に乗れば1440m鞍部は目の前。雪面に飛び出した2本の木の先端は人工的に平らにカットされたもので、まるで雪に埋もれた標識のポールのように見えた。積雪量は不明で、無雪期はこの切り口は地面からどのくらいの高さにあるのだろうか。ここまで来れば鉢山への核心部が目の前だが、その核心部は雪が無く藪漕ぎ確定。私の場合はひとまず安心だ。

 残雪は1460m峰で消えていよいよ藪に突入する。ここで藪にピッケルを絡み取られないためにザック脇にしっかりと固定。しかし藪漕ぎ中はシャフトが藪に引っかかりまくって鬱陶しかった。植生は潅木で笹や根曲がり竹はほとんど混じっていない。しかも潅木はマンサクのように割と素直に真上に生えた細いものが大半で、藪漕ぎの中ではまだ楽な部類で、足が地面に付かない区間は僅かしかなかった。そして驚いたことに少なくとも一度は刈り払いが行われた形跡があった。尾根直上付近で切り口が平らな潅木を多数目撃、少なくとも刈ってから数年以上経過しているし、刈り方もごく軽度で藪漕ぎを完全回避できるわけでもないが、何も手を入れていない状態よりは格段に歩きやすい。まさか登山道があったわけだはなかろうから、たぶん三角点の測量で人が入ったときのものではなかろうか。

 両側が切れ落ちた馬の背のような箇所や岩壁が出てこないかとひやひやしながら進んだが、意外に普通の藪尾根の連続で危険箇所が登場しない。ザックに入れた重い補助ロープの出番も無い。傾斜が急な箇所の一番手は地形図に表現されない微小肩。でも高さは3m程度で藪がびっしり生えているので特に問題なく登れるし、左側を巻こうと思えば巻けるだろう。次の急な箇所は高さ2〜3mの岩っぽい急斜面で、ここは尾根の真ん中に潅木藪が無い場所があり、そこは「岩場」というよりも「岩っぽい場所」との表現が適切で、露骨な岩は無く凸凹も多く潅木も多いので無雪期なら手がかり足がかりに困らないし、もし落ちても怪我をするような場所ではなく高度感も無い。そのすぐ上も岩っぽい場所だが岩壁は尾根直上ではなく右側で、左を巻けば普通の樹林の斜面である。これら3箇所が積雪期に雪壁になりそうな場所だが、無雪期なら岩山っぽさは無く、特に危険も無い場所にグレードダウンする。なお、この尾根は北側が絶壁、南側は急だが絶壁ではなく立ち木が多いので、少なくとも無雪期なら南側へ落ちても簡単に止まることが可能。積雪期は保証の限りではない。ただし北側に落ちればタダでは済まないのは間違いない。

 2箇所目の岩っぽい場所で尾根直上を離れて西側を迂回。こちらの方は潅木藪ではなく背の高い樹林で歩きやすいからだ。雪が出てくれば1540m肩が近く、雪を伝って尾根直上に復帰。これで危険地帯と思われていた東尾根の急傾斜区間は全てクリアできた。無雪なら予想外のあっけなさで拍子抜けだが、この時期の情報が無いのだからこんなこともあるだろう。

 1540m肩より先は一気に傾斜が緩んで残雪が復活、潅木藪から開放されて心地いい。もう一箇所だけ藪が出た微小ピークがあるが、ここは北側に残雪があったのでそちらから迂回可能。まあ、距離が短いので尾根上の藪を進んでも数分程度だが。その先で再び広い残雪の尾根に変わり、最後は右に逃げる残雪の帯を見送って尾根中央の潅木が生えた雪の無い土手状の尾根を進む。ここはやや強固な潅木藪だが落葉樹しかなく、石楠花やハイマツ、アスナロ、イヌツゲ等は混じっていないのでマシな部類だ。ここにも刃物跡が見られた。

 最高点の僅かに西側に潅木が開けたごく小さな広場が登場、その中央に三角点が鎮座していた。そして意外にも近くの低木に山頂標識が掛かっていた。山頂はどの時期から雪が消えるのか不明だが、おそらく4月中旬以降でないとここも雪の下だろうが、まさか無雪期に登ったわけではないだろう。三角点は真の最高点より50cm程度低いが誤差の範囲だろう。

 山頂からは北側は大きく開け、1ヶ月前の烏帽子岳は名前どおりの形状に見える。2週間前の阿彌陀山は阿彌陀山南峰と重なっているが山頂は見えていた。私が登った山頂直下の雪渓はまだ残っているだろうか。左手には海川左岸の鋸岳〜駒ヶ岳のごつごつした稜線が続き、その左手には穏やかな雨飾山。昼闇山の方向は潅木が被って見通しはあまり良くないのが残念。そちら方面の展望は山頂部の潅木尾根に入る前の残雪帯で楽しむのがいいだろう。思ったより危険度が低かったので山頂でのんびり休憩できた。日差しがたっぷりで気温は適度、風はほぼ無風で半袖で休憩してちょうど良かった。

 帰りの東尾根は様子が分かっているので安心して下れた。潅木藪も下りの方が通過は楽。でもやっぱりピッケルが引っかかって鬱陶しいが。今回はルートの様子が不明だったのでアイゼンとピッケルを持ってきたが、特に今回はピッケルの出番は無くストック程度でOKだった。アイゼンを使ったのは昼闇谷とその西側の尾根に上がったり下ったりしたときの雪渓のみ。しかも12本爪ではオーバースペックで6本爪でも良かったかもしれない。ただし、あくまでも今回の条件ではの話で、鉢山東尾根に雪が残った状態ではどれほど危険度が上がるのか。少なくとも今回程度の装備は必要だろう。事前に誰か入って情報を流さない限りは雪の状況は不明なので、やはり安全のためには本格的な雪装備を持って入った方がいいだろう。

 帰りは概ね往路を戻る。ただし昼闇谷手前の尾根に乗るまでは若干ルートを変更して早めにトラバース。でもあまりメリットは無く往路の谷を素直に歩いた方が楽だったかもしれない。アイゼンを付けて往路と同じ雪渓を下って昼闇谷へ。右岸への登り返しも往路と同じルートにしたが、往路では気付かなかったが目印が落ちていたので、残雪期の山スキーでもここでトラバースする人がいるようだ。確かに私がトラバースした箇所は谷底から台地までの標高差が他と比較して少ないので無駄な体力を消耗しなくて済む。右岸台地に出たところには大きな枯れ木があるので、いい目印になる。

 アケビ平はその名の通りなだらかな地形で読図が難しく、途中で往路より東寄りなのに気付いて針路変更。杉植林で先が見通せないのもルート判断を難しくする一因だ。林道に乗った地点は往路で林道を離れた地点よりも下側だったが、この付近一帯は残雪に覆われて藪はないので着地点がずれても問題は無い。

 無事に駐車地点に到着。平日と言うこともあり、当然ながら他に車は皆無。週末になれば山菜取りに入る人がいるだろう。なお、この林道入口には山菜取りのための入山禁止の看板が出ていたが、地元が地権者で地元住民だけが山菜取り可能らしい。林道脇にはそれこそ山のようにフキノトウが顔を出していた。


まとめ
 意外なほど簡単に登れてしまった鉢山。その決め手は残雪状況。痩せた東尾根の雪は落ちていること。そこまでのルートは残雪があって藪が回避可能であること。昼闇谷は適度な箇所で雪が残って渡れること。この3点が揃った状態が今回であった。年によって残雪状況が異なるので来年も5月中旬が適度かは不明だが、おそらく一般的な残雪状況の年なら大型連休後半から5月半ばが適期だろう。東尾根の藪は大したことがないので無雪期でも問題ないが、そこに至るまでのルートは雪が無いと藪が厳しいと思う。美味しい時期は短いのであった。

 そしてまさかの1シーズンで海谷山塊難関峰3山に全て登れるとは思ってもみなかった。今年は大型連休は半分が出社でまとまった休日が確保できず、テントを背負って時間がかかる残雪の藪山には行けなかったが、連休終盤の阿彌陀山に今回の鉢山で充分な埋め合わせができた。

 

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